コンセプト
Behavior Based Safety
「事故が起きていないから安全」。本当にそう言えるでしょうか?
事故が起きていなくても、リスクは存在し得ます。無理な作業を続けることで、リスクが高まっていることもあり得ます。
人の「行動」に着目し、作業環境と行動を測定、定量分析して、安全な行動を選択するようにしていくことが「行動に基づく産業安全」のコンセプトです。
共同研究者である清水尚憲様(株式会社ジー・オー・ピー)との会話から作成
イベント&ニュース
<セミナー開催> 安全の可視化と最適化による職場のカイゼン
産業安全・ポジティブ安全の最新動向!
「安全の可視化と最適化による職場のカイゼン」セミナーを開催いたします。
職場の安全、不安全行動にお困りの皆様、是非ご参加ください。
申し込みはこちらから
■開始日時
2024年1月18日 13:30~15:00 (最長17時まで個別相談あり)
■ハイブリッド開催
オンライン(ZOOM)
および対面(長岡技術科学大学 東京サテライトキャンパス、霞が関)
■参加費用
無償
■対象者
・製造業・建設業の安全管理者、作業環境改善に関心のある方
・職場で起こる不安全行動にお困りの方
※該当されない場合はお申し込み頂けないこともございますので予めご了承ください。
■定員
20名
■開催目的
私たちが常に目指してきた労働安全の目標は、リスクの低減と災害の根絶でした。
これらの取り組みは引き続き重要ですが、時代は変わりつつあります。
今、私たちは「ポジティブ安全」という新しい概念を提案します。
これは、ただリスクを回避するのではなく、職場を安全で、快適で、やりがいのある場所に変えることを目指します。
このセミナーでは、「ポジティブ安全」を実現するための具体的な手法を学びます。
作業者が主体的に安全を守り、同時に生きがいや働きがいを感じられるような職場をどのように創り上げるか、具体的な事例と共に紹介します。
さらに、ウェルビーイングの観点から職場の安全を可視化し、行動分析学を活用して安全を最適化する方法、不安全行動を低減する方法についても掘り下げます。
皆様、この革新的なセミナーで、職場の安全管理を新たな次元に引き上げる一歩を踏み出しましょう。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
■講演者
穴田 啓樹(株式会社アトリエ)
北條 理恵子 准教授(長岡技術科学大学 システム安全専攻)
■予定プログラム
1)ウェルビーイングを取り巻く状況
2)安全とウェルビーイングの相互作用
3)安全の可視化と職場の最適化
4)支援サービス紹介
安全・効率化のための行動計測/分析
リスクアセスメントの最適化
安全ウェルビーイングの可視化
効果的な職場の最適化
5)質疑応答
6)個別相談(予約制)
※当日の個別相談は対面のみを対象といたします。
オンラインにて別日程でご希望される場合は備考欄にご記入ください。
■申し込み方法
以下の URL からお申し込みください。
https://www.atelier-inc.com/seminar/
産業安全ウェルビーイング・アンケート
共同研究者である長岡技術科学大学システム安全工学専攻の北條研究室では、はたらく人々の行動、ストレス、そして、最近注目されている「ウェルビーイング」等を、定量的に計測・分析・評価しています。その結果にもとづいて、行動分析学という手法を使い、作業現場の最適化を行っています。そのため、様々な作業環境でのウェルビーイングの調査が必要です。作業現場の最適化のため、皆様のウェルビーイングに関するアンケートへのご協力をお願いいたします。
https://www.atelier-inc.com/wb
※パスワードは「5234」を入力してください。
アンケートURLのリンク
※スマートフォンからもアンケートにご回答頂けます。
※このアンケートは会社や個人が特定されることはありません。また、個々の回答内容を公開することはありません。
2021/9/4から12/26までにご協力くださった92名のアンケート状況を「産業安全ウェルビーイング」に掲載しました。
第7回グローバルサミットで発表
Behavior Based Safety Project の共同研究者である北條理恵子先生が、第7回グローバルサミットで発表を行いました。
この学会は、米国のAIChE(American Institute of Chemical Engineering/米国化学工学会)傘下のCCPS(Center for Chemical Process Safety)と、GSPS(Global Summit on Process Safety)及び日本の安全工学会が共催したプロセス安全に関する学術集会です。
(発表証明書)
Asia Pacific Symposium on Safety (APSS) 入賞
2023年10月17日~20日にBangkok International Trade & Exhibition Centre (BITEC)にて Asia Pacific Symposium on Safety(APSS) が開催されました。
APSSは産業安全,労働衛生,環境保全等の分野の最新の研究成果が発表される場で、このAPSSにおいて Behavior Based Safety Project の共同研究者である北條理恵子先生、森田智恵様(長岡技術科学大学)、清水尚憲様(株式会社ジー・オー・ピー)が発表され、ベストポスター賞を受賞しました。
■北條理恵子先生の発表概要
近年、日本の産業現場での働き方は急速に変化しているが、SDGsでは働く人々の安全・安心、幸福感や生きがいをもって作業に臨む環境を提供することが事業者に求められ始めている。私たちは、働く人のWell-beingを客観的に測定、評価、予測するための、働く人に特有の測定手順の確立が必要と考え、Diener(1989)の主観的Well-being、Ryff(2015)の心理的Well-beingの2尺度を使用して調査を行ってきた。本プレゼンテーションでは、実施したアンケートの結果を報告し今後の展開を発表する。
■森田様の発表概要
未経験者が作業を理解できずに装置を使用することは、不安全行動を誘発する一因となる。本研究では不安全行動を誘発する作業に着目し、装置の設計変更が実験協力者の行動に及ぼす影響について実験により確認したので報告する。
■清水様の発表概要
アルミ合金製可搬式作業台は主に天井や内壁などの仕上げ作業に使用され、作業床までの高さが2m未満なので高所作業に該当しないものの、墜落事故は時折発生しており、重篤な事故になる可能性がある。本発表では、この災害要因の一つである作業床の「揺れ」に着目し、安全性・安心感を定量的に評価する方法を報告する。
向殿政男先生を訪問
11月2日に長岡技術科学大学の北條理恵子先生と明治大学の向殿政男先生を訪問して、ポジティブ安全学のお話を伺いました。これまで守ってきた安全は、危険源に対するリスクを許容可能な程度まで低減し、残留リスクを意識して災害が起こらないように注意して作業するもの。安全の究極の目的は、安全な環境で、健康に、幸せに働くことであり、これまでのマイナスをゼロにする活動を続けつつも、ゼロからプラスにする活動を進めていこう。ポジティブな考え方を導入すれば、より主体的に安全を守り、創っていく職場になるに違いない。というお話でした。是非このお考えを広めていきたいです。
行動に基づく産業安全
Behavior Based Safety
労働安全衛生対策は、発生した労働災害の原因を究明し、類似災害の再発防止策を確立することが多いです。しかし、作業者の労働環境の変化、ハザードの多様化により、作業者が対応し切れず、ヒヤリハットが発生しています。
これを防ぐには、職場の潜在的なハザードを見つけ出し、事前に的確な方策を講ずるリスクアセスメント及びリスク低減措置の検討が必要となります。実際のところ、労働安全衛生法第28条の2では、危険性または有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置(リスクアセスメント及びリスク低減)の実施が明記されています。
一般的にリスクアセスメント及びリスク低減措置は、次の流れで進めます。
1)危険性または有害性の特定
2)ハザードごとのリスクの見積もりと評価
3)リスク低減のための優先度の設定、リスク低減措置内容の検討
4)リスクの低減措置の実施
現場で使用する機械のリスクアセスメント及びリスク低減は、メーカーで実施されますが、問題は、個々の現場の作業環境を配慮していないところにあります。
機械を現場で利用する者、安全管理者が、作業環境の条件を考慮してアセスメントを実施し、リスク低減措置の妥当性を評価する必要があるのです。この際、注意すべきことは、リスク低減措置が、教育に偏ったり、注意喚起や精神論に依存しないこと。また、不安全行動が安全行動に変わることを測定し、定量的に検証することです。
この定量評価で役立つのが「行動分析学」です。
行動分析学の視点で考えると、人の不安全行動の変容、または増強しているのは環境要因であって、この環境要因と行動の随伴性に着目して改善していくアプローチが必要なのです。
(共同研究者 北條理恵子 先生の論文から許可を得て作成)
産業安全ウェルビーイング
well-being
これからの労働安全は、労働災害のネガテイブなリスクを減らすことだけでなく、より幸福で、自己実現をかなえる作業現場を目指すことが必要です。私たちの研究では、この第一歩として、産業安全ウェルビーイングの定量評価手法を普及させる啓蒙活動を進めています。今後は、作業スタイルや作業者の背景を考慮し、より感受性の高い尺度を構築し、多様な職種に対しても検証していきます。
そして、ウェルビーイングを可視化した後、「行動分析学」を応用した手法により、「職場の最適化」を支援していきます。
まずはウェルビーイングを測ることから。
是非、一緒にウェルビーイングな職場を作りましょう。
向殿政男 安全、健康、ウェルビーイング セーフティダイジェスト、第68巻、第11号 の内容から作成
ウェルビーイング・アンケートの状況
2023/9/4から11/13 までに75名の皆様がアンケートにご回答くださいました。
今回は業種に「医療」が追加されました。ご協力誠にありがとうございます。
このグラフはアンケート結果を業種ごとの回答者の平均値をレーダーチャートにしたものです。
レーダーチャートの軸のうち、「主観」は Dienerの主観的 well-being、それ以外の6軸は Ryff の心理的 well-being になります。主観的 well-being は自分自身の生活に対する主観的評価と定義され、心理的 well-being は以下のように定義されます。
- 人格的成長(自己成長):発達と可能性の連続上にいて、新しい経験に向けて開かれている感覚
- 人生における目的(人生の目的):人生における目的と方向性の感覚
- 自律性:自己決定し、独立、内的に行動を調整できるという感覚
- 環境制御力(環境の制御):複雑な周囲の環境を統制できる有能さの感覚
- 自己受容:自己に対する積極的な感覚
- 積極的な他者関係(他社との肯定的関係):暖かく、信頼できる他者関係を築いているという感覚
軸の定義の和訳は「西田裕紀子, 成人女性の多様なライフスタイルと心理的well-beingに関する研究, 教育心理学研究,2000,48,433」から引用しました。
長岡技術科学大学の北條理恵子先生は、この2つに医学的 well-being を加えた3つの指標と安全の関係を調査する研究を行っています。
2023/12/26 までにご協力頂いたアンケートの状況(92名)
働く人のウェルビーイングの見える化と行動分析学的手法による職場の改善
2023年9月29日の第82回全国産業安全衛生大会において、北條理恵子先生のご講演がありました。
北條先生から許可を頂き、講演の概要を紹介いたします(無断転載禁止です)。
2023年9月29日(金)の第82回全国産業安全衛生大会において、長岡技術科学大学の北條理恵子准教授による「働く人のウェルビーイングの見える化と行動分析学的手法による職場の改善」の講演がありました。アンケートやバイタル測定により「職場のウェルビーイングを見える化」し、その結果をもとに行動分析学的介入を行って「職場の最適化」を進めるものです。
まず、ウェルビーイングについて説明がありました。ウェルビーイングには、瞬間的・感覚的な喜びとされる「主観的ウェルビーイング」と、努力の後の達成感や生きがいとされる「心理的ウェルビーイング」の2つがあります。職場に当てはめてみると、主観的ウェルビーイングが高い職場は安心感があり、心理的ウェルビーイングが高い職場はやりがいを感じられると考えることができます。本研究の結果から、職種や業種、職位により個人が感じる主観的ウェルビーイング・心理的ウェルビーイングの程度に違いがあることが分かったそうです。今までの研究は、専ら比較的長い時間(例えば人生)のウェルビーイングを調べるものでしたが、北條准教授の研究は、職場におけるウェルビーイングを初めて詳細に調べたものと言えます。
次に、行動分析学的介入による職場の最適化についての説明がなされました。行動分析学とは、行動を定量的に計測し、行動の予測と制御を行う心理学の一学派です。ヒヤリハット報告を例に行動分析学について説明すると、本来のヒヤリハット報告は職場や作業の危険性を認識して安全にするためのものですが、ヒヤリハット報告すると責められる状況も少なくありません。このような場合、まず、報告をしたという行動とヒヤリハットの内容は分けて考えます。そして報告をしたという行動には賞賛などの報酬を、ヒヤリハットの内容については個人的な責任を除外して環境の改善を行います。そうすることで報告行動の強化にあたり、よりヒヤリハット報告が増えるようになると考えます。このように、「適切行動」には賞賛を与えるシステムは、産業現場にはあまり見られないものです。働きがいややりがいを評価し、高めるような組織のシステムが今後必要になってくるだろう、と北條准教授は考えています。
行動分析学の安全についての研究領域は、産業安全行動分析学(Behavior -Based Safety)と呼ばれており、北條准教授らは、このBBSを産業界に普及するべく邁進しておられます。
共同研究者の紹介
北條理恵子
看護師,助産師免許を取得後,自治医科大学附属病院産科病棟に3年間,民間の産科病院に2年間勤務.その後,駒澤大学文学部心理学コースに入学.同大学大学院にて1996年修士(心理学)取得.博士後期課程在学中の1999-2004年まで米国ロチェスター大学でVisiting scientistとして行動毒性学を学ぶ.帰国後に東京大学にて博士(獣医)を取得.2004年国立環境研究所にポスドクとして勤務後,産業技術総合研究所,労働安全衛生総合研究所機械システム安全研究グループ上席研究員を経て,2022年1月より長岡技術科学大学システム安全工学専攻に准教授として勤務.産業安全行動分析学研究室にて,働く人の目線からの安全制御システムの有効性評価,適切な作業行動のための行動分析学的介入,働く人のウェルビーイング評価に関わる研究に従事.除雪,建設・土木,製造業における機械のふるまいを含むすべての作業行動を分析し,定量評価に基づく最適化の構築を目指す.日本行動分析学会会員,日本信頼性学会会員,日本安全工学会会員,計測自動制御学会会員,日本機械学会産業・化学機械と安全部門副部門長.